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眠るときの香りは、鼻クリップ・枕・ディフューザーのどれで届けるとよい? 112人が自宅で2週間試した結果

パステルの水彩風のやさしいイラスト。窓から光の入る明るい寝室で、人がストライプの枕に頭をのせ、ふとんに入ってほほえみながら眠っている。ベッドから少し離れた棚の上に、細い木の棒を挿した小さな瓶(リードディフューザー)があり、そこから淡いラベンダーとミントの色の香りの帯がやわらかく部屋に広がっている。上部に記事の題名「眠るときの香りは、鼻クリップ・枕・ディフューザーのどれで届けるとよい? 112人が自宅で2週間試した結果」
イメージイラスト(AI生成)

前回は、139人が鼻クリップで香りをかぎながら眠った研究を読みました。香りの種類によるはっきりした差は見られず、眠りにかかわるのは「本人がその香りを心地よいと感じるかどうか」ではないか、という結果でした。

その論文で、著者ら自身が気にしていたのが香りの届け方です。鼻クリップは、その人だけに香りを届けられる一方で、家庭でふだん香りを楽しむやり方とは違います。そこで同じ研究チームは、届け方そのものを比べる研究を行いました。今回はその続きの論文を読みます。

この論文について

  • 論文:Effects of nighttime odor exposure and delivery methods on subjective sleep quality in healthy adults(健康な大人での、夜間の香りと香りの届け方が主観的な睡眠の質に与える影響)
  • 著者:Zetian Li、Jean Christoph Gerami-Manesch、Lisa Marie Hoehnel、Jonathan Warr、Antje Haehner、Thomas Hummel
  • 所属(論文の記載):ドレスデン工科大学 医学部 耳鼻咽喉科「嗅覚と味覚」クリニック(ドイツ)、高砂香料ヨーロッパ(フランス)
  • 掲載:Scientific Reports(2025年9月12日公開)。査読を経て掲載された論文で、誰でも全文を読めます(CC BY 4.0)。
  • 研究の体制:前回と同じく、ドレスデン工科大学の嗅覚の研究チームと香料メーカーの高砂香料が組んだ研究です。研究は高砂香料ヨーロッパの支援を受けて行われ、同社の研究者も著者に加わっています。試験用の「香水」も同社が用意したものです。

どうやって調べたのか

参加者

2022年6月から2023年9月までに集めた、健康な大人 131人です。このうち 112人(平均31歳、男性43人)が香りのあるグループ、19人(平均29歳、男性9人)が香りを使わないグループ(対照)になりました。においの感じ方が正常であることをテストで確かめ、妊娠・授乳中の人、喫煙量の多い人、鼻や副鼻腔に炎症のある人、交代勤務や乳児の世話などで睡眠時間が不規則な人は除いています。

選んだ香りと届け方

この研究の特徴は、参加者が自分の好みで香りと届け方を選んだことです。前回の研究で「心地よいと感じるかどうか」が大切そうだと分かったため、好きなものを選んでもらう形にしています。

香り内容人数
ラベンダーラベンダーの花や茎・葉から水蒸気蒸留で採った精油37人
オレンジオレンジの果皮から採った精油37人
「香水」高砂香料が用意したフローラル・ムスク調の香り。トップは柑橘とオレンジ、ミドルは白い花・バラ・ジャスミン、ベースはスミレ・アイリス・ムスク。この研究のための香りで、製品名は公開されていません(論文には同社の品番「BLE312740」が記載されています)38人
届け方やり方人数
鼻クリップ長さ2cmほどの、馬てい形の透明でやわらかいクリップに香りを約0.1ml入れ、鼻に付けて眠る。使い捨てで毎晩交換。使われたのはドイツの「aspUraclip」という製品32人
枕細い木の棒(ラタンスティックのようなもの)で、精油を薄めずにそのまま枕につける。眠り始めに、はっきり香りを感じる強さにする41人
ディフューザー50mlの茶色の小瓶に香りの液を20ml入れ、細い木の棒(リード)を3本挿して、ベッドの近くに置く。いわゆるリードディフューザーの形39人

香りの強さは、事前の小さな試験をもとに、どの組み合わせでも眠り始めに「はっきり感じる」くらいになり、しかも一晩中(8時間以上)香りが続くよう、量や薄め方を調整しています。※枕のつけ方と、香りの強さ・続く時間の決め方は、論文の付録によります。研究チームは当初、薄めた液を枕にスプレーする予定でしたが、薄めるための液で枕カバーがべたつき、眠っている間に肌にふれてしまうため、精油をそのままつける方法に切り替えました。

進め方

  1. 最初の2夜:全員が香りなしで眠り、手首の活動量計(Fitbit Charge 2)でふだんの眠りを記録します。※リンク先は、現在販売されている後継の機種です。
  2. 次の2週間:選んだ香りと届け方で、毎晩自宅で眠ります(対照のグループは香りなし)。
  3. その次の2週間:全員が香りなしで眠り、香りをやめたあとに変化が残るかを見ます。
  4. 最初と、それぞれの2週間のあとに、**ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)**に答えます。眠りの質の自己評価、寝つき、睡眠時間、日中の眠気や疲れなど7つの項目からなる質問票で、合計0〜21点、各項目0〜3点。点が高いほど眠りがよくないことを表します。期間中は、コーヒーやお酒をとったかなどを睡眠日誌にも記録しました。

この研究のよいところ

  • 家庭での香りの使い方に近づけている:前回の論文で残った「鼻クリップは家庭での使い方と違う」という課題に、枕とディフューザーという身近な方法を加えて、正面から取り組んでいます。
  • 好みを尊重した設計:前回の結果を受けて、参加者が好きな香りと届け方を選べるようにしています。「心地よさが大切」という前回の見方を、次の研究に生かした形です。
  • 香りの強さをそろえている:届け方によって香りの強さが違えば、比べる意味が薄れてしまいます。事前の試験で、どの組み合わせでも同じくらいの強さになるよう調整しています。
  • 最初の点数の違いを差し引いて比べている:グループごとの最初の状態の違いを統計で差し引いたうえで、香りのある2週間を比べています。
  • 自分たちの前の結果と合わなかったことも、そのまま書いている:前回の研究では日を追うごとに眠りの感じ方がよくなりましたが、今回はそうならなかったことを、論文の中ではっきり述べています。

分かったこと

1. ディフューザーのグループは、眠りの感じ方がよかった

香りのある2週間で、届け方によって PSQI の合計点に差が見られました。

  • ディフューザーのグループは、枕のグループより、眠りの感じ方がよかった
  • 「眠りの質の自己評価」の項目でも、ディフューザーのグループは、香りを使わないグループよりよかった
  • 「日中の疲れ」の項目でも、届け方による差が見られ、ディフューザーのグループは、香りを使わないグループより疲れが少ない傾向でした※この2つのグループの比較は、統計で差があると言える境目のわずか手前(p=0.052)でした。

2. 「香水」のグループは、眠りの質の自己評価がよかった

香りの種類で比べると、「眠りの質の自己評価」の項目で差があり、**「香水」**のグループは、香りを使わないグループよりよい評価でした。一方、合計点やほかの項目には、香りの種類による差は見られませんでした。ラベンダーのグループも、香りを使わないグループとの間にはっきりした差はありませんでした。

著者らは、ラベンダーのような特定の香りに特別な働きがあるというより、香りが眠りに与える影響はもっと一般的なものかもしれない、と考察しています。「香水」は多くの成分を組み合わせた香りですが、ラベンダーの精油もさまざまな成分を含むため、成分の複雑さだけでは説明できないとも書いています。

3. 活動量計の記録には、はっきりした差は出なかった

活動量計で測った眠っていた時間や、浅い睡眠・深い睡眠・レム睡眠の時間には、届け方でも香りの種類でも、対照のグループとのはっきりした差は見られませんでした。

4. 香りをやめたあとまで続く変化は見られなかった

香りをやめた次の2週間には、香りのあった期間のようなよい変化は残っていませんでした。においの感じ方(どれだけ薄いにおいまで分かるか)も、研究の前後で変わりませんでした。

結果の受け止め方

  • 「よくなった」というより「変わらなかった」:グループごとの平均点(PSQI の合計)を見ると、香りのある2週間に、ディフューザーのグループは最初とほぼ同じ(4.08点→4.05点)でした。一方で、鼻クリップ(3.66点→4.61点)、枕(3.80点→5.40点)、香りを使わないグループ(3.74点→4.74点)は、いずれも点が上がって(眠りの感じ方がよくない方向へ)いました。ディフューザーの「よさ」は、ほかのグループで見られた変化が起きなかった、という形で表れています。対照のグループまで点が上がった理由は、論文には書かれていません。
  • 枕のグループの結果:枕のグループは、香りのある2週間も、やめたあとの2週間も、最初より点が上がっていました。論文はこの理由を説明していません。この研究では、精油を薄めずに、眠り始めにはっきり香りを感じる強さで枕に直接つけていたので、市販の枕用の香りの使い方とは条件が違う点も、知っておきたいところです。
  • 届け方は、くじではなく本人が選んだ:好みを尊重した設計のよい面がある一方で、ディフューザーを選んだ人と枕を選んだ人とで、もともとの好みや暮らし方が違っていた可能性は残ります。香りを使わないグループには、香りのない道具を使う「見せかけの条件」もありませんでした。
  • ひとつひとつのグループは小さい:香りと届け方の組み合わせごとに見ると、1グループは9〜15人です。著者らも、人数の少なさを限界として挙げています。
  • 測り方の限界:眠りの記録は手首の活動量計で、脳波を測る検査ほど細かな変化はとらえられません。著者らは、今後は脳波を使った測定が望ましいとしています。ふだん香水を使っているかなど、香りとの付き合い方も調べていませんでした。
  • 健康な人での結果:参加者は健康な大人で、最初の時点で PSQI が5点を超える(眠りがよくないとされる)人は約26%でした。眠りに悩みを抱える人で同じ結果になるかは、この研究からは分かりません。

日常で取り入れるなら

112人の結果からうかがえるのは、次のようなことです。

  • 寝室で香りを楽しむなら、部屋にゆるやかに広げる方法が合っているかもしれない
  • 特定の香りにこだわるより、自分が好きで、ほっとできる香りを選ぶのがよさそう
  • 香りが眠りを助ける期間は、睡眠時に香りを感じるように配置した期間だけで、やめたあとまで続くとは限らない

著者らは、ディフューザーは体に何も付けずに香りを届けられ、眠っている間に目を覚まさせにくい点で、香りを届ける方法として向いているのではないかと述べています。鼻や枕の近くで香りを強く感じるより、部屋の中に香りがほのかに漂っているくらいが、眠りにはちょうどよいのかもしれません。前回の研究と合わせると、好きな香りを、部屋にやさしく広げる。そんな使い方から試してみてはいかがでしょうか。

PRリードディフューザーは、香りの液を入れた瓶に細い木の棒を挿すだけで、棒が液を吸い上げて香りをゆっくり広げるもの。火も電気も使わないので、寝室に置いたまま眠れます。棒の本数を増やしたり減らしたりして、香りの強さを調整できるのも特徴です。研究で使われたものと同じ製品ではありません。リードディフューザー ›リンク先は Amazon の検索結果です(本文「選んだ香りと届け方」の「リードディフューザー」のリンクも同じページです)。Amazonのアソシエイトとして、眠りの和声は適格販売により収入を得ています。

PRラタンスティックは、籐(ラタン)でできた細い棒。中に細い管が通っていて、香りの液を吸い上げます。リードディフューザーの棒の交換用として、長さや太さ、本数の違うものが売られています。研究では枕に香りをつける道具としても使われていました。研究で使われたものと同じ製品ではありません。ラタンスティック ›リンク先は Amazon の検索結果です(本文「選んだ香りと届け方」の「ラタンスティック」のリンクも同じページです)。Amazonのアソシエイトとして、眠りの和声は適格販売により収入を得ています。

PRFitbit Charge 6 は、研究で使われた Charge 2 の後継にあたる活動量計。毎晩の睡眠スコアと、浅い睡眠・深い睡眠・レム睡眠のグラフで、眠りの記録を残せます。24時間の心拍数の測定、最大7日間のバッテリー、Google ウォレットでの Suica の支払いにも対応しています。Fitbit Charge 6 ›リンク先は Amazon の商品ページです(本文「進め方」の「Fitbit Charge 2」のリンクも同じページです)。Amazonのアソシエイトとして、眠りの和声は適格販売により収入を得ています。

今回の研究では、ディフューザーで部屋に香りを広げる方法が向いていそうだという結果でした。次回は、同じように部屋へ香りを広げた日本の研究として、眠る前の寝室にダージリン紅茶の香りを流した、働く女性20人の研究を紹介する予定です。

部屋にほのかな香りを漂わせて、耳には静かな音を。眠りの和声では、雨音や小川の音と、やさしい和音を流せる再生画面もご用意しています。

この記事は、論文の内容をもとに一般的な情報としてまとめたもので、医療上の助言ではありません。眠れない日が長く続く場合は、医療機関にご相談ください。

この研究の著者・研究室・企業

上場企業の記載は研究の体制をお伝えするためのもので、投資を勧めるものではありません。

参考文献

  1. Zetian Li, Jean Christoph Gerami-Manesch, Lisa Marie Hoehnel, Jonathan Warr, Antje Haehner, Thomas Hummel. Effects of nighttime odor exposure and delivery methods on subjective sleep quality in healthy adults. Scientific Reports (2025). doi:10.1038/s41598-025-18075-x
  2. Agnieszka Sabiniewicz, Pia Zimmermann, Guliz Akin Ozturk, Jonathan Warr, Thomas Hummel. Effects of odors on sleep quality in 139 healthy participants. Scientific Reports 12: 17165 (2022). doi:10.1038/s41598-022-21371-5

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