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雨音とホワイトノイズで寝つきは変わる? 5種類の音を聞き比べた小さな実験

眠れない夜、動画サイトで「雨の音」や「ホワイトノイズ」を探して流したことはありませんか。こうした音は、本当に寝つきを助けるのでしょうか。そして、人によって合う音は違うのでしょうか。

今回は、5種類の音を同じ人に聞いてもらい、眠りに入れたかどうかを比べた研究を紹介します。

この研究について

  • 論文:Possibility of Sleep Induction using Auditory Stimulation based on Mental States(心の状態に応じた、音による入眠の可能性)
  • 著者:Young-Seok Kweon、Gi-Hwan Shin(高麗大学校 脳・認知工学科)
  • 公開:2021年12月、arXiv(論文の公開サイト)
  • 段階:2022年の国際会議(IEEE International Winter Conference on Brain-Computer Interface)への投稿論文として公開されたもので、4ページの短い報告です。

論文の冒頭では、雨音の動画が YouTube で約1,500万回再生されていることにも触れていて、「みんなが使っている音に、本当に効果があるのか」という身近な問いから出発しています。

何を調べたのか

調べたのは、次の5種類の音です。

音中身
無音(偽の刺激)音を出さない。「何か流れている」と思うだけの効果(プラシーボ効果)を見るための比較用
繰り返しのビープ音512Hz の音を2秒鳴らす。これを5秒ごとに繰り返す
バイノーラルビート左耳に 250Hz、右耳に 256Hz の音を同時に流す(差は 6Hz)
ホワイトノイズ無料で配布されている「pure noise 3」という音源
雨音YouTube の音源ライブラリの「Rain Heavy Loud」(激しい雨の音)

ビープ音を入れたのは、車の運転のような単調な作業が「瞬間的な居眠り」を招くことがあるので、単調な音でも同じことが起きるのでは、と考えたためです。音量は、参加者が 40〜45dB の範囲で聞きやすい大きさを選びました。

どうやって調べたのか

参加者は、神経や耳の病気が無い健康な成人13人(平均26.7歳、うち女性5人)です。ただし、1人は脳波の記録がうまくいかなかったため、分析から外されています。

参加者は、まず ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI) に答えました。ふだんの寝つきや睡眠時間、夜中に目が覚める回数などから、睡眠の質を点数にする質問票です。点数が低いほど、よく眠れていることを表します。この研究では、点数が5より低い人を「よく眠れているグループ」、5より高い人を「眠れていないグループ」に分けました。

実験は5回のセッションに分かれていて、1回ごとに次の流れで進みます。

  1. 反応の速さのテスト(5分):画面に数字が出たら、できるだけ早くキーを押す。眠気が強いと反応が遅くなります。
  2. 眠気と気分の質問票:スタンフォード眠気尺度(SSS)と、気分の質問票に答える。
  3. 音を聞く(10分):5種類の音のうち1つを、ランダムな順番で流す。
  4. 質問票と報告:眠気と気分を答え直し、音を聞いている間に「眠りに入ったか、起きていたか」を報告する。

音を聞いている間は、頭の64か所で脳波を測っていました。起きて目を閉じているときに強くなる「アルファ波」が優勢な時間の割合を計算し、起きていた時間の目安にしています。

分かったこと

1. セッションの順番による影響は見られなかった

同じ人が5回続けて音を聞くので、「後のセッションほど眠くなっていたのでは」という疑問が出ます。しかし、音を聞く前の反応の速さにも眠気の点数にも、セッションの間で意味のある差はありませんでした。音の聞き比べは、おおむね同じ条件で行えていたと考えられます。

2. ホワイトノイズと雨音で、2つのグループの間に差が出た

ホワイトノイズと雨音では、「よく眠れているグループ」と「眠れていないグループ」の間で、眠りに入った割合に統計的に意味のある差が出ました。ほかの3つ(無音・ビープ音・バイノーラルビート)では、グループの間の差は見られませんでした。

ただし、どちらのグループの方が眠りに入りやすかったのかは、論文の中で書き方が食い違っています。 要旨(論文の冒頭の要約)では「よく眠れているグループの方が、ホワイトノイズと雨音でより多く眠りに入った」と書かれている一方、考察と結論では「ホワイトノイズと雨音は、眠れていないグループの方により効果があった」と書かれています。グラフの数値も本文からは読み取れないため、この記事では「2つのグループの間で差が出た」ことだけを紹介します。

3. 無音で眠れなかった人の多くが、雨音では眠れた

もう1つの注目点は、音どうしの「補い合う関係」です。

研究者らは、ある音で眠れた人が別の音でも眠れたかを、一致の度合いを表す数値(コーエンのカッパ係数)で調べました。+1 に近いほど「同じ結果になりやすい」、−1 に近いほど「逆の結果になりやすい」ことを表します。

  • 無音と雨音の間は −0.588:無音で眠れなかった人の多くが、雨音では眠りに入っていました。
  • 一方、無音とバイノーラルビート(0.625)、無音とビープ音(0.400)は、同じような結果になりやすい組み合わせでした。

著者らは結論で「何も聞かずに眠れない人には、雨音が助けになりうる」と述べています。

4. 眠いときほど、ビープ音で長く眠った

単調なビープ音については、聞く前の眠気が強い人ほど、アルファ波が優勢な時間(起きている時間の目安)が短いという関係が見られました(相関係数 −0.532)。著者らは、眠気が強いときには単調な音が眠りを助ける可能性があり、音を鳴らす間隔を変えればもっと効果的かもしれない、と考えています。

なお、バイノーラルビートについては、ほかの音と比べて特に眠りに入りやすかったという結果は出ていません。

この研究の限界

著者ら自身が、次の3つを限界として挙げています。

  • 参加者が少ない:分析できたのは12人で、結論を支えるには数が足りない。
  • ふだんの睡眠とは条件が違う:実験室での10分間の聞き比べであり、夜にベッドで眠るときに同じ結果になるかは確かめる必要がある。
  • 脳波の分析が簡単なもの:より詳しい分析が必要。

これに加えて、読む側として次の点にも注意が必要です。

  • 「眠りに入ったか」は、本人の報告(眠った/起きていた)で判定しています。脳波で眠りの段階を判定したわけではありません。
  • 上で書いたとおり、要旨と結論で、グループの差の向きが逆に書かれています。
  • 国際会議への投稿段階の論文で、学術誌の審査を経た論文ではありません。

日常で取り入れるなら

この研究から言えるのは、「雨音が誰にでも効く」ということではありません。むしろ、合う音は人によって違い、ある音で眠れなくても、別の音なら眠れることがあるという点が大切です。

試してみるなら、次のような手順がよさそうです。

  1. まずは何も流さずに横になってみる。
  2. 寝つけない夜は、雨音のような環境音を小さめの音量で流してみる。
  3. 合わなければ、別の音に替えてみる(その日の眠気によっても、合う音が変わるかもしれません)。

眠りの和声では、雨音・焚き火・波打ち際・小川・鈴虫・ピンクノイズを、好きな量だけ混ぜて流せます。この研究で使われたホワイトノイズそのものではありませんが、ピンクノイズはホワイトノイズの高い音を和らげた種類の雑音です。音量のつまみで、自分にとって心地よい組み合わせを探してみてください。

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この記事は、論文の内容をもとに一般的な情報としてまとめたもので、医療上の助言ではありません。眠れない状態が続く場合は、医療機関にご相談ください。

この研究の著者・研究室・企業

  • 研究室論文上研究室の主宰者の名前が入っておらず、推測になりますが、パターン認識・機械学習研究室(高麗大学校。李晟煥〔Seong-Whan Lee〕教授)での研究とみられます。論文の謝辞にある研究費が同研究室の研究課題で、著者らは同じ時期に李教授との共著論文も出しています

参考文献

  1. Young-Seok Kweon, Gi-Hwan Shin. Possibility of Sleep Induction using Auditory Stimulation based on Mental States. arXiv:2112.06463 (2021). 2022 10th IEEE International Winter Conference on Brain-Computer Interface への投稿。
夕暮れの窓ガラスに付いた雨粒
イメージ写真(Burst/Enisa Abazaj)

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