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目覚ましの音は、メロディがあるほうがすっきり起きられる? ― 50人のアンケートで見えた「メロディらしさ」と寝ぼけの関係

パステル画風のイラスト。朝日の差す寝室で、ベッドの上の大人が目を閉じてほほえみながら伸びをしている。枕元の目覚まし時計から音符が流れ、窓の外には昇る太陽と木々。上部に記事の題名「目覚ましの音は、メロディがあるほうがすっきり起きられる? ― 50人のアンケートで見えた「メロディらしさ」と寝ぼけの関係」
イメージイラスト(AI生成)

前回の総説では、警報で目を覚ますかどうかは、音の大きさだけでなく、寝不足やお酒、そして「その音が自分にとって大事かどうか」でも変わる、という話を読みました。

では、毎朝の目覚ましの音はどうでしょうか。目は覚めても、しばらく頭がぼんやりして体が動かない。そんな朝の「寝ぼけ」は、目覚ましの音の選び方で軽くなるのでしょうか。

今朝は、目覚ましに使っている音と、起きた後の寝ぼけの強さとの関係を、50人へのアンケートで調べた研究を読みます。

この論文は、ナゾロジー「目覚まし時計の音が「午前中のパフォーマンス」を左右すると判明!目覚めに良い音とは?」(2020年2月4日)と、GetNavi web「1日のスタートが変わる! スッキリ起きるために最適な「目覚まし音」とは?」(2022年4月21日)でも紹介されています。

この論文について

  • 題名: Alarm tones, music and their elements: Analysis of reported waking sounds to counteract sleep inertia(アラーム音、音楽とその要素 ― 睡眠慣性を和らげる目覚ましの音を、申告をもとに分析する)
  • 著者: Stuart J. McFarlane、Jair E. Garcia、Darrin S. Verhagen、Adrian G. Dyer(ロイヤルメルボルン工科大学〔RMIT〕メディア・コミュニケーション学部、デザイン学部。オーストラリア・メルボルン)
  • 掲載: PLOS ONE 15(1): e0215788(2020年1月28日)。査読を経て掲載された論文です。
  • 資金: オーストラリア政府の研究者養成の奨学金(筆頭著者の McFarlane さんへ)。資金の出し手は研究の計画・分析・執筆に関わっていないとされています。責任著者の Dyer さんは、PLOS ONE の編集者の一人であることを開示しています。

研究の背景: 起きた後の「ぼんやり」には名前がある

目を覚ました直後の、頭が働かず、ぼんやりした状態は「睡眠慣性」と呼ばれます。数秒で消えることもあれば、数分、数時間続くこともあり、論文では、仮眠から起きた直後の判断が飛行機の事故の要因の一つと見なされた例も挙げられています。

睡眠慣性を和らげる方法としては、カフェイン・光・温度・起きた後の決まった動作、そして音が研究されてきました。音については、

  • 75dB のピンクノイズで起こすと、睡眠慣性が軽くなった(Tassi ほか)
  • 本人が好きなポップス(60dB)で短い仮眠から起こすと、睡眠慣性が軽くなった(Hayashi ほか)

という研究があります。ただ、どんな音を使えばよいのかは、まだ決まっていませんでした。

そこで著者たちは、「ポップス」「アラーム音」といった音の種類だけでなく、その音のメロディ・リズム・テンポ・音の高さ・音量という音楽の要素に分けて、寝ぼけとの関係を調べました。たとえば同じ「ポップス」でも、要素に分ければ「とてもメロディがある」「リズムがはっきり」「テンポが速い」「音が高い」「音が大きい」のように表せます。

どうやって調べたのか

参加者

RMIT のメディア・コミュニケーション学部、工業デザイン学部、健康・生物医科学部の大学院生と職員、そしてオーストラリア睡眠協会の会員に、メールで参加を呼びかけました。18歳以上で、耳の聞こえに問題がない人です。調査は2017年5月から2018年5月まで行われました。

回答は83人から集まり、矛盾や回答漏れのあった分を除いて73人。そのうち、目覚ましに音を使っていない23人を除いた50人を分析しています。

人数
18〜29歳14人(28%)
30〜39歳12人(24%)
40〜49歳11人(22%)
50〜59歳10人(20%)
60歳以上3人(6%)
女性/男性35人(70%)/15人(30%)

目覚ましを鳴らすのは**スマートフォンが42人(84%)**で、46人(92%)が毎日同じ音で起きていました。だんだん音が大きくなる設定を使っていたのは17人(34%)です。

アンケートの中身

参加者は、ふだんどおり自宅で起き、起きてから4時間以内に、オンラインのアンケート(約10分)に答えました。主な質問は次の3つです。

  1. 目覚ましの音の種類: アラーム音、歌のある曲、楽器だけの曲、自然の音、ラジオ、その他から選ぶ
  2. その音の要素: メロディ・リズム・テンポ・音の高さ・音量を、それぞれ5段階で答える(メロディなら「メロディがない」〜「とてもメロディがある」)
  3. その音をどう感じるか: 「とても心地よい」〜「とても不快」の5段階

寝ぼけの強さは、睡眠慣性を測るための質問票(SIQ)を短くしたもので測りました。「起きた後、どのくらい〜しますか」という質問に「まったくない」「少し」「ある程度」「よく」「いつも」の5段階で答え、その人の回答で一番多かった段階を、その人の寝ぼけの強さとしています。

結果1: 音の種類では、差は見られなかった

目覚ましの音の種類と寝ぼけの強さには、統計的にはっきりした関係は見られませんでした(p = 0.296)。

図から読み取ると、50人の内訳はアラーム音が28人、歌のある曲が8人、楽器だけの曲が8人、自然の音が6人でした。

結果2: 音をどう感じるかも、統計的な差とまでは言えなかった

目覚ましの音を心地よいと感じるか、不快と感じるかと、寝ぼけの強さの関係も、統計的にはっきりした差とまでは言えませんでした(p = 0.068)。

ただ、図を見ると、一貫した方向は見えます。音を「不快」「とても不快」と感じていた19人のうち、寝ぼけが「よく」「いつも」ある人は6人。一方、「心地よい」「とても心地よい」と感じていた19人では1人でした。

結果3: 差が見えたのは「メロディらしさ」

音楽の要素のうち、寝ぼけの強さとの関係が統計的に示されたのはメロディでした(p = 0.044。人数の少ない表に向いた別の検定でも p = 0.023、効果の大きさは「やや強い」)。リズム・テンポ・音の高さ・音量については、関係があったとは報告されていません。

図から読み取った人数は、次のとおりです。

本人が感じるメロディ寝ぼけがまったくない少しある程度よくいつも計
メロディがない213309
あまりメロディがない2530010
どちらとも言えない1504111
メロディがある7510013
とてもメロディがある231017

※列は寝ぼけの強さ(「起きた後、どのくらい〜しますか」への回答で一番多かった段階)です。

統計で目立っていたのは、次の2か所です。

  • 音に「メロディがある」と答えた人で、寝ぼけが「まったくない」人が、偶然から予想されるより多かった(13人中7人)
  • 「どちらとも言えない」と答えた人で、寝ぼけが「よく」ある人が、偶然から予想されるより多かった(11人中4人)

興味深いのは、「とてもメロディがある」の人たちは、「メロディがある」の人たちほど寝ぼけが少ないわけではなかったことです。メロディは多ければ多いほどよい、という形にはなっていません。

音の種類とメロディの関係

続けて行われた分析では、音の種類とメロディらしさのあいだにも関係が見られました。

  • アラーム音は「メロディがない」と答えられやすい
  • 自然の音は「メロディがある」と答えられやすい
  • 歌のある曲は「とてもメロディがある」と答えられやすい

また、メロディとリズムの答えはよく連動していて、リズムがはっきりしていると感じる人ほど、メロディもあると感じていました。ただ、「とてもリズムがある」と答えた人では、メロディを「ない」と「とてもある」に答える人が同じくらい目立ちました。著者は、リズムが込み入ってくると、メロディがあるかないかを聞き分けにくくなるのではないか、と考えています。

著者の考え

著者は、メロディが「どちらとも言えない」音は、まわりの環境の音のように聞き流されやすく、注意を引きにくいのではないか、と考えています。メロディがはっきりすると、音が「聞き流すもの」から「耳に残るもの」に変わり、目覚めや注意を引き出しやすくなるのかもしれない、という見立てです。

自然の音が「メロディがある」と答えられやすかった理由としては、夜明けの鳥のさえずりを挙げています。多くの文化で、朝を告げる身近な音です。

いずれも著者自身が「仮説」としており、確かめるには、さらに研究が必要だとしています。

この研究のよいところ

  • ふだんの朝のまま調べている: 実験室ではなく、自宅で、いつもの目覚ましで起きた後に答えてもらっています。実際の暮らしに近い形の調査です。
  • 音を要素に分けている: 「ポップス」「アラーム音」といった大まかな種類では差が出なかった一方、要素に分けたことで、メロディという手がかりが見えてきました。目覚ましの音を作るときにも使いやすい見方です。
  • 次の研究の道筋を示している: 著者は、眠った時間や眠気の尺度、反応の速さを測る課題を加えることを、次の研究の課題として挙げています。

結果の受け止め方

  • 50人の、本人の申告による調査: 寝ぼけの強さも、音のメロディらしさも、本人の感じ方です。答えたのは起きてから4時間以内で、すぐ後ではありません。
  • どちらが先かは分からない: この調査の形では、メロディのある音を使っているから寝ぼけが少ないのか、ほかの理由で寝ぼけの少ない人がメロディのある音を選んでいるのかは区別できません。著者も「関係しているかもしれない」という書き方にとどめています。
  • 眠った時間などは聞いていない: 前回の総説で見たように、寝不足は起きにくさに大きく関わります。この調査では、睡眠時間や起きた時刻は聞いていません。年齢や性別による違いも分析していません。
  • 7つの比較のうちの1つ: 音の種類・感じ方・5つの要素の7つを比べ、統計的な差が出たのはメロディでした。また「とてもメロディがある」で寝ぼけが少なくなっていないなど、きれいな一本の傾向ではありません。はじめの手がかりとして受け止めるのがよさそうです。

スマートフォンの音について

参加者の84%がスマートフォンで目覚ましを鳴らしていました。論文によると、スマートフォンのスピーカーが鳴らせる音の幅は、およそ 900〜10,000Hz と見積もられています。人が聞こえる 20〜20,000Hz に比べると狭く、低い音は出にくい、という一般的な特性です。著者は、目覚ましの音を作るときには、この点を考えに入れる必要があるとしています。

日常で取り入れるなら

  • 自分が「メロディがある」と感じる音を試してみる: この研究で手がかりになったのは、音の種類ではなく、本人が感じるメロディらしさでした。鳥のさえずりのような自然の音も、メロディがあると感じられやすい音でした
  • にぎやかすぎなくてもよい: 「とてもメロディがある」音で寝ぼけが少なかったわけではありません。お気に入りの、メロディがはっきりした音から試してみるとよさそうです
  • 心地よく感じられる音を: 統計的な差ではありませんが、音を不快と感じている人に、寝ぼけの強い人が多い傾向が図から見えました
  • 寝不足を続けない: 音を変える前に、まず眠る時間を確保するのが基本です
  • 大事な朝は確実に起きられる設定で: 音を変えた最初のうちは、起きられるかを確かめながら。寝坊できない日は、いつもの設定も残しておくと安心です

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今朝の研究では、メロディのある音が寝ぼけの少なさと結びついていそうだ、という手がかりが見えました。では、そもそも睡眠慣性とは、なぜ起き、何で重くなり、何で軽くなるのでしょうか。次回は、睡眠慣性の原因・強くなる条件・和らげる方法をまとめた総説(Hilditch・McHill 2019)を紹介する予定です。

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この記事は、論文の内容をもとに一般的な情報としてまとめたもので、医療上の助言ではありません。朝起きられない状態や日中の強い眠気が続く場合は、医師にご相談ください。

この研究の著者・研究室・企業

  • 研究者Stuart McFarlane さん(筆頭著者。RMIT。目覚ましの音で睡眠慣性を和らげる研究を専門にしています)
  • 研究者Adrian Dyer さん(責任著者。論文の当時は RMIT メディア・コミュニケーション学部。現在はモナシュ大学 生理学科に所属。動物の色の見え方などを研究しています)

参考文献

  1. Stuart J. McFarlane, Jair E. Garcia, Darrin S. Verhagen, Adrian G. Dyer. Alarm tones, music and their elements: Analysis of reported waking sounds to counteract sleep inertia. PLOS ONE 15(1): e0215788 (2020). doi:10.1371/journal.pone.0215788(PMC で全文公開)

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