朝に溶けるように調整したカプセルでカフェインを飲んだら、スッキリ起きれるのか!?寝る前にカフェインカプセルを飲んでみた研究を読む
寝起きのぼんやりの総説では、起きた直後に頭が働きにくい状態(睡眠慣性)は、起きてすぐがいちばん重く、その後だんだん軽くなっていくことを読みました。
このぼんやりを軽くするものとして、多くの人が思い浮かべるのがコーヒーです。ところが、コーヒーが効き始めるまでには20〜30分ほどかかります。いちばんつらい「起きてすぐ」には間に合いません。かといって、寝る前に飲めば眠りのじゃまになります。
では、寝る前に飲んでおいて、起きる少し前にカフェインが出てくるようにできたら? 今夜は、そんなカプセルを作って試した研究を読みます。
この論文について
- 題名: A novel bedtime pulsatile-release caffeine formula ameliorates sleep inertia symptoms immediately upon awakening(寝る前に飲む、時間をおいて放出される新しいカフェイン製剤は、起きた直後の睡眠慣性の症状を和らげる)
- 著者: Dario A. Dornbierer、Firat Yerlikaya、Rafael Wespi、Martina I. Boxler、Clarissa D. Voegel、Laura Schnider、Aslihan Arslan、Diego M. Baur、Markus R. Baumgartner、Tina Maria Binz、Thomas Kraemer、Hans-Peter Landolt(スイス・チューリッヒ大学 薬理学・毒性学研究所、同 法医学研究所、トルコ・ロクマン・ヘキム大学、ハジェテペ大学、Elixir 社 ほか)
- 掲載: Scientific Reports 11: 19734(2021年10月5日)。査読を経て掲載された論文です。
- 資金と利害: 研究の資金は、チューリッヒ大学の臨床研究の重点プログラム「Sleep & Health」です。カプセルの開発と試験管での溶け方の試験は、トルコの製薬の研究開発会社 Elixir 社で行われ、同社に所属する著者もいます。論文では、著者の利益相反は「なし」とされています。
どんなカプセルなのか
カフェインと、溶け方を調整する樹脂を、小さな粒の上に何層にも重ねてコーティングし、その粒をカプセルに詰めたものです。胃や腸の中で樹脂がふくらんで水を通すようになるまで、カフェインが出てこないしくみです。1カプセルのカフェインは160mgです。
狙いは、飲んでからおよそ7時間後に、効き目のある量がちょうど血液の中にそろうことでした。
どうやって調べたのか
参加者
18〜34歳の健康な男性、のべ32人(平均25.6歳)です。女性を入れなかったのは、月経の周期が眠りやホルモンに影響しうるためです。ほかに、次のような条件がありました。
- 寝つきが20分以内で、毎晩22時〜1時の間に寝ている
- 日中の眠気が強くない
- 病気がなく、薬を飲んでおらず、たばこを吸わない
- ふだんのカフェイン(コーヒー・紅茶・チョコレート・コーラなど)が1日4杯分未満
参加者は、最初の試験の2週間前から最後まで、カフェインを一切とらず、毎晩同じ時刻に寝起きするよう求められました。手首の計測器と睡眠日誌で、それが守られているかを確かめています。
試験1: カフェインは本当に遅れて出てくるか(10人)
10人が22時30分にカプセルを飲み、23時〜7時に睡眠の研究室で眠りました。眠っている間も、腕の血管につないだ管を壁ごしに隣の部屋へ通して、起こさずに血液をとり続け、カフェインの量を測りました。
試験2: 寝ぼけは軽くなるか(22人)
22人が、カフェインのカプセルと、見た目が同じでカフェインの入っていないカプセル(偽薬)の両方を、1週間以上あけて試しました。どちらの夜にどちらを飲んだかは、参加者にも研究者にも分からないようにしてあります。
| 時刻 | すること |
|---|---|
| 22時30分 | カプセルを飲む |
| 2時ごろ | 軽い食事(飲んでから3時間半後) |
| 〜3時 | 起きたまま過ごす |
| 3時〜7時 | 4時間だけ眠る(脳波で記録) |
| 7時〜8時 | 起きてすぐ、反応の速さの課題、気分や寝ぼけの質問、記憶や注意の課題。唾液のホルモン(コルチゾール)を15分ごとに測る |
| 8時〜9時 | もう一度眠れる機会を1時間(脳波で記録) |
※わざと寝不足にしたのは、元気な若い人では寝ぼけが軽く、差が見えにくいためです。寝る時刻が22時の人は、すべて1時間ずつ早めています。
結果
試験1: 狙いどおり、7時間後から効く量に
カフェインは時間をおいて出てきて、飲んでから7時間後に、効き目があるとされる量に届きました。いちばん多くなったのは、10時間半後です。
試験2: 思ったより早く出てしまった
ところが試験2では、同じカプセルなのに、飲んでから3時間半後にはカフェインが出始め、5時間後には効く量になっていました。著者は、試験2でだけ出した夜中の軽い食事で胃が動き、カプセルのコーティングが早く壊れたのだろう、と考えています。つまり、試験2では、眠っている4時間の間にもカフェインが効いていたことになります。
起きた直後の寝ぼけは軽くなった
それでも、偽薬の朝と比べて、カフェインの朝は次のような違いがありました。
- 反応の速さ: 起きて5分後の、光ったらボタンを押す課題で、反応がおよそ0.01秒(10ミリ秒)速くなった(p < 0.001)。ただし、大きく反応が遅れた回数は変わりませんでした
- 気分: 起きて15分後の気分の質問で、前向きな気分が高くなり(p < 0.01)、後ろ向きな気分は低めの傾向でした(p = 0.067)
- 寝ぼけの感じ方: 起きて45分後に「いつもの朝と比べて、ベッドから出にくかったか」などを聞いた質問で、ふるまい・頭の働き・気持ち・体の感覚のどの面でも、寝ぼけが軽かった(p < 0.001)
- 起きた後のホルモン: 起きて1時間後のコルチゾール(目覚めとともに増えるホルモン)が多かった。ただし、いちばん多いときの量や全体の量には差がありませんでした
- 起きた後の眠気: 8時からの1時間、眠ろうとしても、寝つくまでの時間が長く、眠っていた時間も短かった
| 8時からの1時間の眠り | 偽薬 | カフェイン |
|---|---|---|
| 寝つくまでの時間 | 12.9分 | 23.8分 |
| 途中で起きていた時間 | 13.1分 | 25.0分 |
| 浅めの眠り(N2)の時間 | 20.2分 | 11.4分 |
寝不足だったにもかかわらず、「いつもの朝よりベッドから出やすかった」と答えた人もいて、その人数はカフェインの朝の方が多くなっていました(たとえば頭の働きの面で、カフェインの朝12人、偽薬の朝7人)。
変わらなかったこと
起きて45分以上たってから行った、記憶や注意の、より難しい課題では、差はありませんでした。
眠りへの影響
4時間の眠りの全体としては、偽薬と比べてはっきりした違いはありませんでした。ただし、深い眠り(N3)は、81.6分から64.4分へ、約17分短くなっていました。起きる直前の10分間の眠りの段階には、差はありませんでした。
著者の考え
寝ぼけの原因の一つとして、眠っている間に片づけきれなかった「アデノシン」(眠気のもとになる物質)の残りが考えられています。カフェインは、このアデノシンが働く受け口をふさぎます。著者は、起きるころにカフェインが効いていたことで、眠りから目覚めへの切り替わりが助けられたと考えています。
まとめとして著者は、この仕組みのカプセルは、寝不足の健康な若い男性で、起きた直後の寝ぼけを行動・気分・体の面で和らげたとしつつ、深い眠りが減ったことは実用への妨げになる、と書いています。将来、カプセルの溶け方がさらに改良されれば、夜勤や待機の仕事の人、寝ぼけの強い病気の人の助けになるかもしれない、としています。
この研究のよいところ
- 偽薬と比べ、誰がどちらを飲んだか分からないようにしている: 見た目が同じ偽薬を使い、参加者にも研究者にも分からない形で、同じ人が両方を試しています。
- カフェインの量を実際に測っている: 「何時間後に出てくるはず」で済ませず、眠っている人を起こさずに血液をとり続けて、本当にいつ出てきたかを確かめています。
- 思いどおりにいかなかったことも書いている: 試験2でカフェインが早く出てしまったことを隠さず、その理由の見立てと、深い眠りが減ったという不利な結果も、はっきり書いています。
- 寝ぼけをいろいろな面から測っている: 反応の速さ、気分、本人の感じ方、ホルモン、起きた後の眠気まで、同じ朝にまとめて調べています。
- カフェインを断ってから試している: 2週間前からカフェインを断ってもらい、ふだんのコーヒーの影響が混ざらないようにしています。
結果の受け止め方
- 試作のカプセルの研究: 研究のために作られたもので、狙ったとおりの時刻に出てくるかは、食事などで変わりうることも分かりました。
- 人数と対象がかぎられる: 22人の、健康な若い男性だけの研究です。女性や年齢の高い人、カフェインに敏感な人で同じ結果になるかは分かりません。著者も、一つの量・健康な男性だけ・カフェインへの感じやすさを考えていない点を挙げています。
- わざと寝不足にした朝の結果: 夜中の3時まで起きて4時間だけ眠った朝です。ふつうに眠った朝に、どのくらい差が出るかは分かりません。
- 差の大きさ: 反応の速さの差は0.01秒ほどで、難しい課題では差がありませんでした。
- 深い眠りが減った: 今回は早くカフェインが出てしまったためと考えられていますが、眠っている間にカフェインが効けば、眠りが浅くなりうることを示しています。
日常で取り入れるなら
- ふつうのコーヒーやカフェインの錠剤を、寝る前に飲まない: この研究のカプセルは、時間をおいて出てくるように特別に作られたものです。論文でも、寝る前にとったカフェインは、寝つきを遅らせ、眠る時間と深い眠りを減らしうるとされています。まねをするのはやめておきましょう
- 起きてからのコーヒーは、効くまで時間がかかると知っておく: 起きてすぐの大事な判断や運転は、少し時間を置いてから
- 寝ぼけを重くしないのがいちばん: この研究でも、寝ぼけを強めるためにわざと寝不足にしていました。まずは眠る時間を確保することが、寝起きを楽にする近道です
- カフェインの量に気をつけたい人は、医師や薬剤師に相談を: 妊娠中・授乳中の人、心臓の病気のある人、薬を飲んでいる人などは、カフェインのとり方を相談してください
今朝の夜明けの光の研究は、起きる前から光で少しずつ目覚めへ近づける方法でした。今夜のカプセルは、同じことを体の中から行う試みだといえます。どちらも「起きる瞬間より前から、目覚めの準備を始める」という考え方です。
次回は、起きたときに「今日はストレスの多い一日になりそう」と感じた日ほど、その日の頭の働き(作業記憶)が落ちていたのかを、240人が2週間スマートフォンで記録した研究(Hyun ほか 2019)で読む予定です。
眠りの和声では、雨音や小川の音と、やさしい和音を流せる再生画面もご用意しています。
この記事は、論文の内容をもとに一般的な情報としてまとめたもので、医療上の助言ではありません。朝起きられない状態や日中の強い眠気が続く場合は、医師にご相談ください。
この研究の著者・研究室・企業
- 研究室Hans-Peter Landolt 教授の研究室(責任著者。チューリッヒ大学 薬理学・毒性学研究所の、ヒトの睡眠の精神薬理学研究室)
- 企業Elixir İlaç Araştırma ve Geliştirme A.Ş.(トルコ・アンカラの、医薬品の研究開発の会社。研究のカプセルを開発し、試験管での溶け方を試験しました。著者が所属しています)
- 上場企業Gen İlaç ve Sağlık Ürünleri Sanayi ve Ticaret A.Ş.(ボルサ・イスタンブール、銘柄コード GENIL)。現在、Elixir 社の株式の95%を持つ親会社です
上場企業の記載は研究の体制をお伝えするためのもので、投資を勧めるものではありません。
参考文献
- Dario A. Dornbierer, Firat Yerlikaya, Rafael Wespi, Martina I. Boxler, Clarissa D. Voegel, Laura Schnider, Aslihan Arslan, Diego M. Baur, Markus R. Baumgartner, Tina Maria Binz, Thomas Kraemer, Hans-Peter Landolt. A novel bedtime pulsatile-release caffeine formula ameliorates sleep inertia symptoms immediately upon awakening. Scientific Reports 11: 19734 (2021). doi:10.1038/s41598-021-98376-z(PMC で全文公開)