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枕の素材で、朝の首のこわばりや肩甲骨まわりの痛みは変わる? ― 横向きで眠る106人が5種類の枕を試した研究を読む

色鉛筆で描いた夜の寝室。形や厚みの違う枕がいくつも並ぶベッドで、大人が横向きに枕へ頭をのせ、目を閉じて穏やかに眠っている。枕元にはランプと観葉植物。上部に記事の題名「枕の素材で、朝の首のこわばりや肩甲骨まわりの痛みは変わる? ― 横向きで眠る106人が5種類の枕を試した研究を読む」
イメージイラスト(AI生成)

朝起きると首がこわばっている。肩甲骨のあたりが重い。そんなとき、まず疑いたくなるのが枕です。お店に行けば、低反発、首に沿う形、羽根、ラテックスと、素材も形もさまざまな枕が並んでいます。では、素材によって朝の症状は本当に変わるのでしょうか。

前の記事「朝の首や腰の痛みは、寝姿勢と関係がある?」では、寝姿勢を撮影した研究を読みました。今回は、同じオーストラリアの理学療法の研究者たちが、枕の素材に絞って行った試験を読みます。日本語の「肩こり」に近い、首のこわばりと肩甲骨や腕の痛みを、起きたときに記録しています。

この論文について

  • 論文:Pillow use: the behavior of cervical stiffness, headache and scapular/arm pain(枕の使用:首のこわばり、頭痛、肩甲骨・腕の痛みのふるまい)
  • 著者:Susan J Gordon、Karen A Grimmer-Somers、Patricia H Trott
  • 所属(論文の記載):ジェームズ・クック大学、南オーストラリア大学(オーストラリア)
  • 掲載:Journal of Pain Research 3巻(2010年)。査読を経て掲載された論文で、誰でも全文を読めます。
  • 関連する論文:同じ試験の「起きたときの首の痛み」は、2009年に別の論文(Manual Therapy 誌)で報告されています(この記事では本文を確認していません)。
  • 枕の提供と利益相反:試験で使った枕のうち、ポリエステルは Tontine、ウレタンは Dentons という、どちらもオーストラリアの寝具メーカーが提供し、ラテックスは大学が用意、羽根は量販店で購入しています。著者は、枕の提供のほかにメーカーの関与は無く、利益相反は無いと申告しています。

どうやって調べたのか

参加者

南オーストラリア州の地方の町で、以前の電話調査の参加者と新聞広告から集めた 106人です。条件は、ふだん枕1つで横向きに眠ること、首から背中にかけての症状で治療を受けていないこと。若い層(18〜40歳)・中年(41〜59歳)・高齢(60歳以上)を、町の人口の比率に合わせて集めています。

つまり、首や肩の症状で困っている人を集めた研究ではありません。ふだん健康な人が、枕を替えたときに朝の症状が出るかどうかを見ています。

試した枕

枕中身・形
ポリエステルわたの、ふつうの枕
ウレタン(ふつう)ウレタンフォームの、ふつうの形
ウレタン(首に沿う形)ウレタンフォームの、首の下が高くなった形
羽根羽根の枕(量販店で購入)
ラテックスゴムのフォームの枕

どれも新品で、高さは最も高いところで 11.5〜14.2cm、幅 45〜46cm、長さ 70〜73cm でした。ラベルとカバーを外し、番号を付けて無地の枕カバーに入れ、どの枕か分からないようにしています(ただし、形や手ざわりで分かった人もいた可能性がある、と著者らは書いています)。

進め方

最初の1週間は自分の枕で眠り、ふだんの症状を記録します。その後の9週間で、5種類の枕を1週間ずつ試し、あいだに自分の枕に戻る1週間をはさみました。枕の順番は、研究とは独立した担当者が無作為に決めています。

毎朝、起きたときの首のこわばり・頭痛・肩甲骨や腕の痛みの有無と、それがどれくらい続いたか(30分ほど/半日/一日中)を日誌に書きます。お酒、体調不良、隣で眠る人や子ども・ペット、天気、騒音など、枕以外の理由が思い当たる日は分析から除きました。合わない枕は、1週間を待たずにやめてもよいことにしています。

分かったこと

1. 自分の枕でも、3人に1人は朝に首がこわばっていた

最初の1週間、使い慣れた自分の枕で眠ったときでも、

  • 首のこわばりが少なくとも1回あった人:33.9%
  • 頭痛:19.6%
  • 肩甲骨や腕の痛み:17.9%

でした。「いつもの枕なら症状は出ない」とは言えない、というのが著者らの最初の指摘です。

2. 羽根の枕は、やめた人がいちばん多かった

1週間を最後まで試せた人の割合は、羽根の枕が 67.3% といちばん低く、ラテックスが 97% といちばん高くなりました。試験そのものをやめた7人のうち3人は、羽根の枕を試している間に首から背中の症状が出たことが理由でした。

3. 症状が「まったく無かった」人の割合

1週間のあいだ、その症状が一度も無かった人の割合です(枕以外の理由が思い当たる日を除いた集計)。

枕首のこわばり頭痛肩甲骨・腕の痛み
自分の枕66.1%80.4%82.1%
ポリエステル61.2%74.6%76.1%
ウレタン(ふつう)61.5%73.4%81.6%
ウレタン(首に沿う形)52.5%74.7%77.2%
羽根49.2%63.3%63.6%
ラテックス67.5%90.9%88.3%

羽根の枕は、3つの症状すべてで「症状なし」の割合がいちばん低く、ラテックスは頭痛と肩甲骨・腕の痛みでいちばん高くなりました。自分の枕と比べたときに、統計的に意味のある差が出たのは羽根の枕で、肩甲骨・腕の痛みが出る見込み(オッズ)は自分の枕の約2.5倍、頭痛は約2.3倍でした。

4. 首に沿う形のウレタン枕は、ふつうの形より良いとは言えなかった

首の下が高くなった「首に沿う形」の枕は、首のこわばりの「症状なし」が 52.5% と、ふつうの形のウレタン枕(61.5%)より低く、頭痛と肩甲骨・腕の痛みでも差はありませんでした。著者らは、こうした症状のある横向きの人に、ふつうの形より首に沿う形を勧める根拠は無い、としています。

また、こわばりが出たときに半日以上続きやすかったのは、ポリエステル・首に沿う形のウレタン・羽根の枕でした(自分の枕と比べて)。

著者の結論と、表の数値の食い違い

この論文の結論は、「ラテックスの枕は、朝の頭痛や肩甲骨・腕の痛みを減らすために勧められる」「羽根の枕は勧められない」という、かなり強いものです。

ただ、表の数値を見ると、ラテックスについては次のような留保があります。

  • 自分の枕と比べると、ラテックスの差ははっきりしない:頭痛のオッズは 0.4 ですが、95%信頼区間が 0.2〜1.1 と「差なし」の1をまたいでいます。肩甲骨・腕の痛みも 0.6(0.2〜1.7)で、差は出ていません。
  • はっきりした差が出たのは、試験用のポリエステル枕と比べたとき:頭痛は 0.3(0.1〜0.8)で意味のある差でした。肩甲骨・腕の痛みも、そのままでは差がありましたが、男女の違いを調整すると差は消えています。
  • 首のこわばりでは、ラテックスの差は無い:自分の枕と比べて 0.9(0.4〜1.9)、ポリエステルと比べて 0.8(0.4〜1.5)でした。

もうひとつ、要旨には「自分の枕でも約20%の人に、少なくとも1回は朝の症状があった」と書かれていますが、本文の表では首のこわばりが 33.9% です。どの集計を指した「約20%」なのか、論文からは読み取れません。

羽根の枕の結果は、自分の枕と比べても差が出ていて、比較的一貫しています。一方、ラテックスについては「勧められる」と言い切るより、「この試験の中では、ほかの枕より症状が少ない傾向があった」と受け取るのが、表の数値に沿った読み方だと思います。

この研究の限界

著者ら自身が、次の点を限界として挙げています。

  • 完全には目隠しできていない:カバーを替えても、形や手ざわりで枕の種類が分かった人がいた可能性があります。
  • 毎日の自己申告だけ:症状の有無も続いた時間も、本人の記録です。最初の週は記録に慣れておらず、気にしすぎて多めに書いた可能性もあります。
  • 自分の枕の情報が少ない:比べる基準にした「自分の枕」が、どんな素材で何年使ったものかは、ほとんど分かっていません。

これに加えて、読む側として次の点にも気をつけたいところです。

  • 各素材とも、試したのは1つの製品だけ:羽根の枕は量販店で買った1種類、ラテックスも1種類です。同じ素材でも、高さ・硬さ・作りの違う枕は数多くあり、この結果が素材そのものの違いなのか、その製品の違いなのかは分かりません。
  • 横向きで眠る、ふだん健康な人だけ:あおむけやうつぶせで眠る人、首や肩の症状で困っている人に当てはまるかは、この研究からは分かりません。著者らも、症状のある人での試験は今後必要だとしています。
  • 1週間ずつの試験:新しい枕に体が慣れるまでの影響が入っている可能性があります。
  • 15年以上前の研究:枕の素材や作りは、その後も変わってきています。

日常で取り入れるなら

この研究から言えるのは、「ラテックスの枕なら肩こりが治る」ということではありません。106人の結果からうかがえるのは、次のようなことです。

  • 使い慣れた自分の枕でも、朝に首がこわばる人は3人に1人いた
  • 枕を替えると、朝の症状の出方は変わりうる。同じ人でも、枕によって差が出た
  • 首に沿う形だからといって、ふつうの形より症状が少ないとは限らなかった
  • この試験の中では、ラテックスの枕で頭痛や肩甲骨まわりの痛みが少ない傾向があった

枕を見直すときは、素材の名前だけで決めず、横向きになったときに頭と首が背骨とまっすぐ並ぶかを確かめるのが出発点になります。前の記事で読んだように、寝姿勢そのものも朝の症状と関係している可能性があります。新しい枕は、この研究と同じように1週間ほど使って朝の様子を記録してみると、自分に合うかどうかを落ち着いて判断しやすくなります。

痛みやしびれが強い場合、長く続く場合、頭痛がいつもと違う場合は、枕を替えるだけで済ませず、医療機関で相談してください。

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PRTontine(トンティン)は、1956年からオーストラリアで枕や掛け布団などを作っている寝具ブランドで、多くの製品をメルボルンの工場で作っています。この研究では、試験用のポリエステルの枕を提供しました。日本の Amazon では、同ブランドのオーストラリア製でウール100%の、洗える掛け布団や敷きパッドが扱われています。研究で使われた枕ではありません。Tontine の寝具 ›リンク先は Amazon の検索結果です。Amazonのアソシエイトとして、眠りの和声は適格販売により収入を得ています。

枕を整えて横になったら、あとは眠りに入る時間です。眠りの和声では、雨音や小川のせせらぎなどの環境音と、やさしい和音を好きな量だけ混ぜて流せます。首や肩の力が抜けていくひとときに、心地よい組み合わせを探してみてください。

この記事は、論文の内容をもとに一般的な情報としてまとめたもので、医療上の助言ではありません。首や肩の痛み・しびれが強い場合、長く続く場合、頭痛がいつもと違う場合は、医療機関にご相談ください。

この研究の著者・研究室・企業

  • 著者Susan Gordon 教授(筆頭著者。現在はフリンダース大学。論文当時はジェームズ・クック大学)
  • 企業Tontine(オーストラリアの寝具ブランド。試験用のポリエステルの枕を提供)
  • 企業Dentons(オーストラリアの枕メーカー。試験用のウレタンの枕を提供)

参考文献

  1. Susan J Gordon, Karen A Grimmer-Somers, Patricia H Trott. Pillow use: the behavior of cervical stiffness, headache and scapular/arm pain. Journal of Pain Research 3: 137–145 (2010). doi:10.2147/JPR.S10880(PMC3004642)

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