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運動と眠りと朝ごはんがあれば遺伝を超えられる!?「スッキリ起きれる朝」についての研究

水彩風のイラスト。左に木々の茂る昼間の公園を軽やかに歩く人と「運動」、中央に月と星の下で布団にくるまって眠る人と「眠り」、右に朝日の差す食卓でトーストと目玉焼き、サラダを食べる人と「朝ごはん」。上部に記事の題名「運動と眠りと朝ごはんがあれば遺伝を超えられる!?「スッキリ起きれる朝」についての研究」
イメージイラスト(AI生成)

前回の総説では、起きた後のぼんやり(睡眠慣性)を重くする条件として、寝不足・夜中の目覚め・深い眠りからの目覚めが挙げられていました。

でも、ふだんの暮らしの中では、よく眠れたはずなのにぼんやりする朝もあれば、なぜか頭がすっきりしている朝もあります。その差はどこから来るのでしょうか。生まれつきの体質なのでしょうか、それとも暮らし方なのでしょうか。

今朝は、833人の2週間の記録から、この問いを調べた研究を読みます。

この論文は、GIGAZINE「朝の目覚めやその後の覚醒度を改善する「4つの要因」が双子を用いた研究データで明らかに」(2022年11月25日)でも紹介されています。

この論文について

  • 題名: How people wake up is associated with previous night’s sleep together with physical activity and food intake(人の目覚め方は、前の晩の眠り、そして体の動きと食事と関係している)
  • 著者: Raphael Vallat、Sarah E. Berry、Neli Tsereteli、Joan Capdevila、Haya Al Khatib、Ana M. Valdes、Linda M. Delahanty、David A. Drew、Andrew T. Chan、Jonathan Wolf、Paul W. Franks、Tim D. Spector、Matthew P. Walker(カリフォルニア大学バークレー校 人間睡眠科学センター、キングス・カレッジ・ロンドン、ルンド大学、マサチューセッツ総合病院・ハーバード大学医学部、Zoe 社 ほか)
  • 掲載: Nature Communications 13: 7116(2022年11月19日)。査読を経て掲載された論文です。
  • 資金と利害: 研究は Zoe 社(イギリスの、食事と健康のサービスの会社)の支援で行われました。Zoe 社の顧問を務める著者や、社員・元社員の著者がいて、Spector さんは同社の共同創業者で株を持っています。責任著者の Walker さんは、Oura など4社の顧問を務め、株を持っていることを開示しています。

どうやって調べたのか

参加者

この研究は、食事への体の反応の個人差を調べる大きな研究「PREDICT1」のデータを使っています。参加者はイギリスとアメリカの健康な成人で、イギリスでは双子の研究への登録者が多く参加しました。データの条件がそろった 833人(イギリス749人・アメリカ84人)を分析しています。

年齢平均46.2歳
女性/男性600人/233人
双子かどうか一卵性の双子340人、二卵性の双子134人、双子でない人359人
記録した夜合計9,542晩(1人あたり平均約11晩)
眠った時間平均7.66時間(寝付き 23時25分ごろ、目覚め 7時05分ごろ)

※参加者に謝礼は支払われていません。

2週間、家で記録したこと

  • 眠りと体の動き: 利き手でない方の手首に、研究用の活動量計(加速度計)を2週間つけ続けました。夜はここから眠った時間・起きた時刻などを、昼は体の動きの量を出しています。
  • 朝ごはん: 2週間のうち9〜11日間、研究で用意した決まった朝ごはんを食べました。中身はマフィンが中心で、栄養の割合だけを変えてあります(下の表)。前の晩から8時間以上何も食べず、朝ごはんの後の3〜4時間は水以外を口にせず、運動も控えてもらいました。
  • 血糖: 上腕に、血糖の変化を15分ごとに記録する計測器をつけ、朝ごはん後2時間の血糖の上がり方を測りました。
  • 目覚めのよさ: 専用のアプリが「どのくらいはっきり目が覚めていますか」と聞き、0〜100 の目盛りで答えます。朝ごはんを食べ始めたときと、その30分後・1時間半後・2時間半後に答えてもらい、最初の3時間の平均をその日の「朝の目覚めのよさ」としました。朝ごはんは平均8時12分ごろ、起きてから平均1時間8分後でした。
朝ごはん中身エネルギー炭水化物の割合
ふつう(比べる基準)マフィン3個502kcal約57%
炭水化物多めマフィン3個504kcal約76%
たんぱく質多めマフィン2個+シェイク502kcal約57%(たんぱく質 約33%)
脂質多めマフィン2個約500kcal約23〜32%
食物繊維多めマフィン2個+繊維のバー2本534kcal約71%
ブドウ糖の飲み物ブドウ糖 75g を溶かしたもの300kcal100%

※ほかに、マフィンとシェイクで 890kcal の「たっぷりの朝ごはん」もありました。「ブドウ糖の飲み物」は、病院で血糖の検査に使うものと同じ飲み方で、この日は飲み物にもカフェインをとらないよう求められていました。

「その人のいつもと比べる」

この研究の大事な工夫は、眠りをその人のいつもの眠りと比べていることです。7時間眠るのがふつうの人にとっての8時間と、9時間眠るのがふつうの人にとっての8時間は、意味が違います。そこで、眠った時間や起きた時刻は、その人の2週間の平均から「どのくらい多いか少ないか」に直して分析しています。年齢・性別・体格・日の出の時刻・週末かどうかなども、あわせて調整しています。

結果1: 目覚めのよい朝と関係していた4つのこと

同じ人の中で、目覚めのよい朝とそうでない朝を比べると、次の4つが、それぞれほかの要因とは別に関係していました。

1. 前の晩の眠り

  • いつもより長く眠った夜の翌朝は、目覚めがよかった(p < 0.001)
  • いつもより遅く起きた朝も、眠った時間を考えに入れても、目覚めがよかった(p < 0.001)
  • 眠りの効率(寝ている間に起きていた時間の少なさ)とは、はっきりした関係はなかった(p = 0.48)

2. 前の日の体の動き

  • 前の日の昼間によく体を動かしていたほど、翌朝の目覚めがよかった(p = 0.049)
  • 逆に、夜中の体の動きが多かった(眠りが途切れがちだった)ほど、翌朝の目覚めは悪かった(p = 0.004)
  • 前の日の運動との関係は、そのあいだの眠った時間を考えに入れても残りました

3. 朝ごはんの中身(「ふつう」の朝ごはんと比べて)

  • 炭水化物多めの朝は、目覚めがよかった(p = 0.002)
  • たんぱく質多めの朝は、目覚めが低めだった(p = 0.012)
  • ブドウ糖の飲み物の朝は、目覚めが大きく下がった(p < 0.001)。すべての朝ごはんの中で、いちばん低い結果でした
  • 脂質多め・食物繊維多めでは、はっきりした差はありませんでした

4. 朝ごはんの後の血糖

  • 同じ朝ごはんでも、血糖の上がり方が小さかった日ほど、目覚めがよかった(p < 0.001)。この関係は、朝ごはんの中身の違いとは別に見られました

論文の図から読み取った、関係の強さ(標準化した係数。0から離れるほど強く、プラスは目覚めがよい方向)は、次のとおりです。

要因関係の強さ
いつもより長く眠った+0.06
いつもより遅く起きた+0.04
前の日の昼間によく動いた+0.02
夜中の体の動きが多かった−0.03
炭水化物多めの朝ごはん+0.08
たんぱく質多めの朝ごはん−0.07
ブドウ糖の飲み物−0.37
朝ごはん後の血糖の上がり方が大きい−0.05

※ブドウ糖の飲み物を除いた分析でも、ほかの朝ごはんの結果はほとんど変わりませんでした。また、同じ図では、起きてから朝ごはん(最初の記録)までの時間が長い日ほど目覚めがよい(+0.14)という関係も示されています。起きた直後ほどぼんやりしている、という睡眠慣性の性質と合う結果です。

なぜ炭水化物で上がり、ブドウ糖で下がるのか

炭水化物が多い朝ごはんで目覚めがよく、ブドウ糖の飲み物で大きく下がる。どちらも糖なのに逆の結果に見えますが、著者は次のような違いを挙げています。

  • マフィンの朝ごはんには、炭水化物のほかに脂質やたんぱく質も含まれる。ブドウ糖の飲み物は糖だけ
  • マフィンの糖は主に砂糖(ブドウ糖と果糖が半分ずつ)で、ブドウ糖だけの飲み物より血糖が上がりにくい
  • ブドウ糖の飲み物は 300kcal で、ほかの朝ごはん(約500kcal)よりエネルギーが少なく、空腹を感じやすい

血糖が大きく上がると目覚めが下がる、という結果について、著者は「甘いもので元気が出る」という一般的なイメージとは逆に、血糖が急に上がった後には眠気が出やすい(いわゆる「シュガークラッシュ」)という研究と合う、と述べています。脳の中で血糖を感じ取る神経が、目を覚ましておく仕組み(オレキシン)を抑える、という説明も紹介しています。いずれも著者の考察で、この研究で確かめたものではありません。

結果2: 人による差のほうが大きかった

この研究では、もう一つ大事なことが分かりました。朝の目覚めのよさは、日による差よりも、人による差のほうが大きかったのです。

上の要因を使った予測は、目覚めのよさのばらつきの59%を説明できました。ただ、「その人のふだんの平均」だけで予測した場合との差は5%ほどで、多くは「もともと目覚めのよい人か」で決まっていました。

では、人による差は何と関係していたのでしょうか。年齢、気分、眠りの質、食習慣、運動の習慣など、たくさんの項目を機械学習でまとめて調べたところ、関係の強かった順に次の4つが挙がりました。

  1. ふだんの気分: 毎晩「今日一日、どのくらい幸せに感じたか」に答えてもらった平均。幸せに感じている人ほど、ふだんの目覚めがよかった
  2. 年齢: 年齢が高い人ほど、目覚めがよかった
  3. 本人が感じる眠りの質: 眠りの質の質問票(PSQI)で、眠りがよいと感じている人ほど、目覚めがよかった。活動量計で測った眠りより、本人の感じ方のほうが強く関係していた
  4. 一日に食べる回数: 1日5回以上食べる人は、3〜4回の人より目覚めが低めだった

うつ病や不安症の診断を受けたことがある人は、ふだんの目覚めが低めでした。

結果3: 遺伝の影響は小さかった

双子が多く参加していることを生かして、一卵性と二卵性の双子の似かたを比べ、遺伝の影響も調べました。

  • 一日を通した目覚めのよさで、遺伝で説明される割合の見積もりは 25%。ただし幅が広く、統計的にはっきりした値ではありませんでした
  • 朝の目覚めのよさでは39%。こちらも統計的にははっきりしませんでした
  • ばらつきの多く(57〜59%)は、一人ひとりの環境や暮らしで説明されていました

一方、眠った時間(51%)や寝付く時刻(約60%)は、遺伝の影響がより大きく見積もられました。眠りの長さや時刻は体質の影響を受けやすくても、目覚めのよさそのものは、暮らし方の影響が大きいのかもしれません。

著者の考え

いつもより長く・遅く眠った朝に目覚めがよかった理由として、著者は次の3つを候補に挙げています。

  • 遅く起きると、体内時計の上で、体がより「朝」に進んだ時刻に目覚める
  • 明け方に多いレム睡眠の時間が増え、レム睡眠から目覚めやすくなる(深い眠りから起きるより、ぼんやりが軽いとされる)
  • 長く眠ると、たまった眠気(睡眠圧)がより解消される

まとめとして著者は、目覚めのよさに関わる要因の多くは、生まれつき決まったものではなく、変えることのできるものだと述べています。

この研究のよいところ

  • 大人数で、ふだんの暮らしのまま: 833人に、家で2週間、のべ9,500晩以上の記録をとっています。睡眠や体の動きは本人の記憶ではなく、手首の計測器で測っています。
  • 朝ごはんをそろえている: 研究で用意した決まった朝ごはんを、ほぼ同じエネルギーで栄養の割合だけ変えて食べ比べています。食べ方の指示(時間内に食べる・その後は水だけ)を守れなかった朝は分析から外しています。
  • その人のいつもと比べている: 眠りの量や時刻を一律の基準ではなく、その人のふだんからのずれで見ているため、「自分にとっての寝不足」を捉えられています。
  • 予測を確かめている: 2週間の半分の日で作った予測が、残りの日に当てはまるかを確かめています。
  • 遺伝を調べられる: 双子が多く参加した研究ならではの分析で、「目覚めのよさは体質で決まってしまう」という見方に、データで答えています。
  • 限界を自分たちで書いている: 次の節の点の多くは、著者自身が論文の中で挙げています。

結果の受け止め方

  • 「関係していた」という結果: 眠りや運動は、参加者がふだんどおりに過ごした記録です。たとえば「前の日によく動いたから目覚めがよい」のか、「調子のよい時期だから、よく動けて目覚めもよい」のかは、この形の研究では区別しきれません。
  • 一つひとつの差は小さめ: ブドウ糖の飲み物を除くと、それぞれの要因の関係の強さは大きくありません。また、目覚めのよさは日による差より人による差のほうが大きく、どれか一つを変えれば朝が劇的に変わる、という結果ではありません。
  • 朝ごはんの結果は、マフィンの比較: 著者は、この結果から「炭水化物を何グラムとれば目が覚める」と考えるべきではない、と書いています。どの朝ごはんも(ブドウ糖の飲み物を除き)いろいろな栄養が混ざっていて、きれいに分けられてはいません。ごはんやパンの朝食で同じことが言えるかは、この研究からは分かりません。
  • 目覚めのよさは本人の答え: 0〜100 の目盛りで本人が答えたもので、反応の速さなどの課題では測っていません。
  • 測っていないこと: 朝の光を浴びた量は測っていません。睡眠時無呼吸の検査もしていません。また、ほとんどの朝ごはんにはカフェインがなく、コーヒーとの組み合わせは分かりません。
  • 参加者は健康な人たち: 病気のある人や、交代勤務の人について同じことが言えるかは分かりません。今回の分析は、PREDICT1 で事前に計画されていたものではなく、集めたデータを後から調べた探索的なものです。

日常で取り入れるなら

  • 自分にとっての「いつもより少し多め」に眠る: この研究で効いていたのは、一律の睡眠時間ではなく、その人のいつもより長く眠ることでした
  • 昼間に体を動かす: 前の日の昼間によく動いた日ほど、翌朝の目覚めがよい傾向でした
  • 甘い飲み物だけの朝ごはんは避ける: 糖だけの飲み物の朝は、目覚めが大きく下がりました。ほかの栄養も一緒にとれる朝ごはんがよさそうです
  • 起きてすぐの大事な判断は、少し時間を置いてから: 起きてから時間がたつほど、目覚めはよくなっていました
  • 糖尿病などで食事の指導を受けている人は、主治医の指示を優先してください

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この研究では、朝の光を浴びた量は測られていませんでした。著者も、明るい光は朝のホルモンの分泌を高め、日中の目覚めをよくすることが知られていて、測っていれば朝の目覚めをもっと説明できたかもしれない、と書いています。次回(月曜の朝)は、冬のフィンランドで、夜明けのように少しずつ明るくなる光で目覚めると眠りの質の感じ方が変わるかを、一般の人100人で8週間調べた研究(Leppämäki ほか 2003)を紹介する予定です。

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この記事は、論文の内容をもとに一般的な情報としてまとめたもので、医療上の助言ではありません。朝起きられない状態や日中の強い眠気が続く場合は、医師にご相談ください。

この研究の著者・研究室・企業

  • 研究室Matthew P. Walker 教授(責任著者。カリフォルニア大学バークレー校 心理学科。人間睡眠科学センターを主宰しています)
  • 研究者Raphael Vallat さん(筆頭著者。論文の当時はカリフォルニア大学バークレー校 人間睡眠科学センター。現在は Oura で機械学習の研究者として、身につける機器のデータの分析に取り組んでいます)
  • 企業Zoe(イギリスの、食事と健康のサービスの会社。研究を支援し、データを保有しています。社員・元社員の著者がいます)

参考文献

  1. Raphael Vallat, Sarah E. Berry, Neli Tsereteli, Joan Capdevila, Haya Al Khatib, Ana M. Valdes, Linda M. Delahanty, David A. Drew, Andrew T. Chan, Jonathan Wolf, Paul W. Franks, Tim D. Spector, Matthew P. Walker. How people wake up is associated with previous night's sleep together with physical activity and food intake. Nature Communications 13: 7116 (2022). doi:10.1038/s41467-022-34503-2(PMC で全文公開)

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