fortuna眠りの和声

スヌーズで少しずつ起きると、寝起きはかえって重くなる?日本の大学生が睡眠実験室で確かめた研究を読む

淡い水彩のイラスト。朝の寝室で、同じパジャマ姿の人が3つの場面に描かれている。「00 min.」では枕元の目覚まし時計のそばで眠り、「+10 min.」では起き上がって目をこすり、「+20 min.」ではベッドに座ってまだぼんやりしている。上に記事の題名「スヌーズで少しずつ起きると、寝起きはかえって重くなる?日本の大学生が睡眠実験室で確かめた研究を読む」
イメージイラスト(AI生成)

昨日の朝の記事では、起きたときに「今日はストレスが多そう」と感じた日ほど、その日の記憶の課題の成績が落ちていた研究を読みました。寝起きの状態は、その日一日に響くことがあるようです。

では、その寝起きを、私たちは毎朝どうやって迎えているでしょうか。目覚ましが鳴って止め、数分後にまた鳴って止め……。スマートフォンのスヌーズ機能を使って、少しずつ起きている人も多いと思います。

今朝は、そのスヌーズで起きると寝起きの頭はどうなるのかを、日本の大学生へのアンケートと、睡眠実験室での実験で調べた研究を読みます。

この論文について

  • 題名: Effects of using a snooze alarm on sleep inertia after morning awakening(朝の目覚めでスヌーズアラームを使うことが睡眠慣性に与える影響)
  • 著者: 小川景子さん(Keiko Ogawa)、Emi Kaizuma-Ueyama さん(国内の学会発表では上山絵美さん)、林光緒さん(Mitsuo Hayashi)。広島大学 大学院人間社会科学研究科・総合科学部
  • 掲載: Journal of Physiological Anthropology 41: 43(2022年12月31日)。査読を経て掲載された論文で、誰でも全文を読めます。
  • 資金と利害: 資金は「該当なし」、利益相反は「なし」とされています。実験は広島大学の研究倫理委員会の承認を受けています。

「睡眠慣性」は、起きた直後のしばらくの間、頭がぼんやりして、反応や判断がにぶくなる状態のことです。くわしくは記事「寝起きのボンヤリ頭は徹夜明けより働かない!?睡眠慣性についての数十年の研究をまとめたNASAエイムズ疲労対策研究室の研究者らの総説を読む」で読みました。今回の論文も、この総説を引用しています。

著者らの予想は「スヌーズは寝起きをよくする」だった

じつは著者らは、スヌーズが寝起きをよくするかもしれない、と考えていました。

目覚ましを使わずに決めた時刻に自分で起きる「自己覚醒」では、起きる前から心拍が少しずつ上がり、体が目覚めの準備をしていることが知られています。そして、自己覚醒の方が睡眠慣性は小さい、という研究があります。また、スヌーズを習慣にしている人は、夜を通して、また眠りの最後の1時間も、眠りが浅く安静時の心拍が高めだったという米国の報告もありました。

スヌーズが自己覚醒と同じように体を目覚めに向かわせるのなら、睡眠慣性は小さくなるはずだ、というのが著者らの仮説でした。

研究1: 大学生293人のアンケート

心理学の授業に出ていた日本の大学生(18〜28歳)に、目覚めの習慣を聞きました。有効な回答は293人分です。

質問結果
朝起きるのに、目覚ましなどの道具をよく使う251人(85.7%)
スマートフォンのスヌーズ機能をよく使う(道具を使う289人のうち)204人(70.5%)
スヌーズを週7日使う(スヌーズを使う248人のうち)47.5%
スヌーズを鳴らし始めるのは、起きる時刻の何分前か平均20.3分。30分前までの人が87.2%
1回の朝に鳴らす回数平均6.2回(いちばん多かったのは4回、中央値は5回)
鳴る間隔平均7.0分(いちばん多かったのも中央値も5分)

スヌーズを使う理由で多かったのは、「1回の目覚ましでは、時間どおりに起きられるか心配」(50.7%)と、「寝る前に、起きられるという安心がほしい」(35.6%)でした。寝坊への不安から使っている人が多いことが分かります。

研究2: 10人が睡眠実験室で、スヌーズあり・なしの朝を比べた

参加者と準備

研究1には参加していない、健康な大学生10人(21〜26歳、女性5人・男性5人)が参加しました。全員、ふだんから週5〜7日スヌーズを使っている人です。

まず1週間、自宅でいつもどおり眠ってもらい、睡眠日誌と腕に着ける計測器で、寝る時刻・起きる時刻を確かめました。この間は、実験で使うのと同じ型の携帯電話のスヌーズで毎朝起きて、手順に慣れてもらっています。

3晩続けて実験室に泊まる

そのあと、睡眠実験室に3晩続けて泊まりました。1晩目は慣れるための夜で、2晩目と3晩目に、次の2つの条件を1回ずつ行いました。どちらを先にするかは、人によって入れ替えています。

条件起きる時刻までの20分
スヌーズあり起きる時刻の20分前から、枕元の携帯電話のアラーム(50デシベル)が5分おきに4回鳴る。1回は最長1分で、ボタンで止められる。止めたら、また眠るように言われていた
スヌーズなし何も鳴らない

どちらの条件でも、決めた起床時刻(平均で午前7時52分ごろ)に、コンピューターのビープ音(60デシベル)で起こされました。寝る時刻と起きる時刻は、自宅の1週間に合わせています。

部屋は防音で空調が効き、時刻の手がかり(外の光など)をなくしてあります。実験の日は、お酒・カフェイン・たばこを控えてもらいました。眠っている間は、脳波・眼の動き・あごの筋肉の電気信号を測る「睡眠ポリグラフ」で、眠りの段階を20秒ごとに判定しています。

起きたあとに測ったこと

  • 反応の速さ: 音が鳴ったらできるだけ早くボタンを押す、5分間の課題。寝る前に1回、起きてから30分の間に3回(1回目・2回目・3回目)
  • 元気さ(Global Vigor): 頭のさえ・眠気・やる気などを0〜100の線の上に印を付けて答える。寝る前と、起きてから2分・12分・22分・32分後
  • 気分(Global Affect): 楽しさ・悲しさ・落ち着き・緊張を同じように答える
  • 眠りの感じ方: 起きてすぐに、日本で作られた起床時の質問票(OSA睡眠調査票 MA版)で

結果

夜の眠りは、最後の20分以外は変わらなかった

最後の20分を除くと、眠った時間(スヌーズあり 371.9分、なし 376.8分)も、深い眠りやレム睡眠の長さも、2つの条件ではっきりした差はありませんでした。

最後の20分は、スヌーズで眠りが細切れになった

違いが出たのは、スヌーズが鳴る最後の20分です。

最後の20分スヌーズありスヌーズなし
眠っていた時間15.7分19.7分
目が覚めていた時間3.9分0.2分
うとうとした浅い眠り(N1)の時間6.1分1.5分
目が覚めた回数平均4.1回平均0.3回
眠りの段階が切り替わった回数平均12.2回平均3.5回

スヌーズなしの朝は、ふつうの浅い眠り(N2)やレム睡眠が安定して続いていました。スヌーズありの朝は、アラームが鳴るたびに目が覚め、うとうとした眠りが繰り返し入っていました。

決めた起床時刻の時点で、スヌーズありでは10人のうち4人がすでに起きていて、残りの6人は浅い眠り(N2)から起こされました。スヌーズなしでは、すでに起きていたのは1人だけでした。

※一晩全体の眠った時間も、スヌーズありの方が約9分短くなっていました(387.8分と396.5分)。

反応の速さ: 30分たっても、スヌーズの朝は遅いままだった

反応の速さ(ミリ秒)寝る前起きて1回目2回目3回目
スヌーズあり約219約229約232238.4
スヌーズなし約221約228約221221.9

※3回目以外の値は、論文の図から読み取ったおおよその値です。

統計的にはっきりした差が出たのは、起きてから30分近くたった3回目だけでした(スヌーズありの方が16.5ミリ秒遅い。p = 0.024)。

ただ、図を見ると傾向ははっきりしています。スヌーズなしの朝は、2回目から反応が寝る前の速さに戻っていきました。スヌーズありの朝は、回を重ねるごとに少しずつ遅くなっていきました。

睡眠慣性はふつう、起きてから15〜30分ほどでだんだん消えていくとされています。スヌーズありの朝は、その消え方の曲線に沿わなかった、と著者らは書いています。押し間違いの少なさ(正しく反応できた割合)には、差がありませんでした。

元気さ: スヌーズなしの朝だけ、寝る前より上がった

スヌーズなしの朝は、元気さの点数が、寝る前(40.8点)より、起きてから2分後(49.9点)・12分後(51.7点)・22分後(51.1点)・32分後(52.6点)のすべてで、はっきり上がっていました。

スヌーズありの朝は、寝る前より上がった、とは言えませんでした。図では、起きてからの4回とも、スヌーズありの点がスヌーズなしの点を下回っています。

一方、気分(楽しさ・落ち着きなど)には、条件による差はありませんでした。

眠りの感じ方

起きてすぐの質問票では、「寝つきと眠りの続き方」だけ、スヌーズなしの朝の方がよい結果でした(p = 0.040)。起きたときの眠気、夢、疲れの回復、眠った長さの感じ方には、はっきりした差はありませんでした。

寝る前の不安の強さも、2つの条件で差はありませんでした。

著者の考え

予想とは逆に、スヌーズは寝起きの睡眠慣性を長引かせた、と著者らは結論しています。

理由として著者らが考えているのは、スヌーズが鳴るたびに無理に起こされ、また眠ろうとすることの繰り返しです。眠りに入ったり出たりするたびに、自律神経(心拍や血圧などを調整する働き)には決まった変化が起き、それがなめらかな目覚めを妨げるのかもしれない、と書いています。眠りが細切れになると日中の眠気が増える、という過去の研究も挙げています。

起きる直前の眠りの段階が条件で違っていたことも影響したかもしれない、としながら、眠りの段階と睡眠慣性の関係は研究によって結果が分かれていて、はっきりしたことは言えない、とも書いています。

そのうえで、著者らはスヌーズを一方的に否定してはいません。研究1で見たように、スヌーズは寝坊への不安を和らげるために使われていて、不安が強いと寝つきが悪くなることも知られています。スヌーズは睡眠慣性を強めても、寝坊の不安を減らして夜の眠りを守るうえで大事な役割を持っているかもしれない、と書いています。

今後は、アラームの種類・強さ・音量・間隔など、睡眠慣性や眠りの細切れを減らすスヌーズの使い方を調べるべきだ、としています。また、起きる前の30分に部屋を少しずつ明るくする「人工の夜明け」で睡眠慣性が減ったという研究にも触れています。

この研究のよいところ

  • 同じ人で、両方の朝を比べている: 10人全員が、スヌーズあり・なしの朝を1回ずつ過ごしています。どちらを先にするかも人によって入れ替えていて、順番による影響を減らしています。
  • 眠りを脳波で測っている: 「何回目が覚めた気がするか」ではなく、睡眠ポリグラフで、最後の20分の眠りの変化を20秒ごとに記録しています。
  • ふだんのスヌーズを再現している: 鳴らす回数・間隔・始める時刻を、研究1のアンケートの答え(20分前から5分おきに4回)に合わせています。参加者も、実際にスヌーズを習慣にしている人たちで、事前に1週間、同じ型の携帯電話で慣れてもらっています。
  • 寝る時刻・起きる時刻をそろえている: 自宅の1週間の記録をもとに、一人ひとりのいつもの時刻で眠り、起きています。
  • 企業の関わりがない: 資金は「該当なし」、利益相反は「なし」とされています。

結果の受け止め方

  • 参加者は10人: 著者らも、人数が少なく、統計の検出力が限られていたことを最初の限界に挙げています(事後に計算した検出力は0.47)。
  • はっきりした差は一部: 反応の速さで統計的な差が出たのは3回目の1か所で、条件と時間の組み合わせの効果は「差がある傾向」(p = 0.08)にとどまります。図で見える一貫した方向と、表の数値の差の有無は、分けて受け止める必要があります。
  • 寝坊の心配がない状況だった: 参加者は、決めた時刻に必ず起こされることを知っていました。スヌーズの本来の目的である「寝坊の不安」は、この実験では再現されていません。寝る前の不安にも差はありませんでした。
  • 大学生だけ: 働いている人や、ほかの年代でどうなるかは分かりません。
  • 実験室での1回ずつ: 自宅での毎日の暮らしで、同じことが起きるかは今後の課題とされています。
  • 長く続けた場合は分からない: スヌーズを何年も使い続けたときの影響は、この研究では調べていません。

日常で取り入れるなら

  • スヌーズの最後の20分は、眠りが細切れになっていた: この研究では、スヌーズを鳴らした20分のうち、眠れていたのは平均15.7分でした。その20分は、深く眠り直せる時間にはなっていなかったようです。
  • ただし、やめればよいとは言い切れない: 著者ら自身が、スヌーズが寝坊の不安を和らげ、夜の寝つきを守っているかもしれないと書いています。不安なく1回で起きられる自信がない日に、無理にスヌーズを手放す必要はなさそうです。
  • 音で何度も起こす代わりに、光で少しずつ: 著者らは、起きる前の30分に部屋を少しずつ明るくする「人工の夜明け」で睡眠慣性が減ったという研究に触れています。起きる前から部屋を明るくする光については、記事「冬の暗い朝、夜明けの光で起きると眠りは変わる?」で、目覚ましの音そのものについては、記事「目覚ましの音は、メロディがあるほうがすっきり起きられる?」で読みました

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この記事は、論文の内容をもとに一般的な情報としてまとめたもので、医療上の助言ではありません。朝どうしても起きられない状態や、日中の強い眠気が続く場合は、医師にご相談ください。

この研究の著者・研究室・企業

  • 研究室林光緒さん(論文の連絡先の著者で、ラストオーサー。広島大学 大学院人間社会科学研究科の教授で、睡眠心理学・精神生理学が専門です)

参考文献

  1. Keiko Ogawa, Emi Kaizuma-Ueyama, Mitsuo Hayashi. Effects of using a snooze alarm on sleep inertia after morning awakening. Journal of Physiological Anthropology 41: 43 (2022). doi:10.1186/s40101-022-00317-w(PMC で全文公開)

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