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頭を冷やして眠ると、深い眠りは増える? ― 生理前に眠気が強まる14人で試した研究を読む

水彩風のやわらかな寝室で、大人がひんやりした水色の枕に頭をのせ、目を閉じて穏やかに眠っている。枕のまわりに水滴と涼しげな風の流れが描かれたイラスト。上部に記事の題名「頭を冷やして眠ると、深い眠りは増える? ― 生理前に眠気が強まる14人で試した研究を読む」
イメージイラスト(AI生成)

暑い夜に、冷たいタオルや氷まくらで頭を冷やすと、すっと眠りに入れた気がする。そんな経験のある人は多いと思います。では、頭を冷やすと、眠りそのものは本当に変わるのでしょうか。

体の深いところの温度(深部体温)は、眠りに入るころに下がっていきます。体温が下がりきらないと眠りが妨げられやすい、ということは以前から知られています。今回は、そこに「頭だけを冷やす」という方法で迫った、日本の研究を読みます。

対象は、生理の前(黄体期)に日中の眠気が強くなる若い女性です。黄体期にはホルモンの働きで体温が 0.3〜0.5℃上がり、眠っている間も高めに保たれます。体温が下がりにくい時期の眠りに、頭の冷却は効くのか。性別を問わず、「頭を冷やすと眠りはどう変わるのか」を考える手がかりになる研究です。

この論文について

  • 論文:Head cooling during sleep improves sleep quality in the luteal phase in female university students: A randomized crossover-controlled pilot study(睡眠中の頭部冷却は、女子大学生の黄体期の睡眠の質を改善する:ランダム化クロスオーバー比較のパイロット研究)
  • 著者:Seiji Hamanishi、Eri Eguchi、Tatsuo Ito、Kenjiro Nagaoka、Keiki Ogino
  • 所属(論文の記載):岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科、関西福祉大学 看護学部(日本)
  • 掲載:PLOS ONE 14巻3号(2019年3月)。査読を経て掲載された論文で、誰でも全文を読めます。
  • 研究の位置づけ:題名のとおり、少人数で効果の見込みを確かめるパイロット研究です。臨床試験の登録(UMIN000031314)は、参加者を集め始めた後に行われています(論文によると、当時の大学の倫理委員会では体を傷つけない試験に登録の義務がなかったため)。
  • 利益相反:著者は、利益相反は無いと申告しています。

どうやって調べたのか

参加者

兵庫県の大学で、ポスターを見て応募した 19〜22歳の女子大学生14人です。条件は、黄体期に日中の眠気が強くなること。日中の眠気の質問票(日本語版エプワース眠気尺度、24点満点で点数が高いほど眠い)の平均は、生理の後の時期(卵胞期)が 5.93点、黄体期が 15.1点、生理中が 12.1点でした。

心の病気・婦人科の病気・睡眠の病気・生理不順のある人、妊娠中や授乳中の人は除いています。

頭の冷やし方

使ったのは、中に細い管が通り、温度を調整した水が流れるシート(COCOMIN、サーミック・テクノ社)です。これを頭の下に敷いて、

  • 冷やした場合:シートを 25℃ に保つ
  • 対照実験:シートを 35℃ に保つ

の2通りを比べました。どちらの夜も同じシートを使い、温度だけを変えています。

測り方

実験は参加者それぞれの自宅の寝室で行いました。寝る時刻と寝間着をそろえ、室温 25〜28℃、湿度 40〜60%、明るさ 0〜5ルクスに保つよう頼み、昼寝・カフェイン・お酒を控えてもらっています。

基礎体温が上がったのを合図に黄体期の実験を始め、黄体期の前半に2期間、後半に2期間、冷やした夜と対照の夜を、人によって順番を入れ替えて試しました。各期間は2晩続けて、2晩目のデータを分析しています(1晩目は、慣れない機器による影響が出やすいため)。期間の間は1日空けました。

眠りは、おでこと耳の後ろに電極を貼る1チャンネルの携帯型脳波計で測り、眠りの段階(目覚め・レム睡眠・浅い眠り N1/N2・深い眠り N3)と、深い眠りで多く出るデルタ波の量を出しました。段階の判定は、研究の中身を知らされていない機器の会社が行っています。あわせて、耳の奥の温度(鼓膜温)を5分ごとに記録し、起きたあとに寝心地(数値評価スケール〔NRS〕。0〜10で、0がいちばんよい)と眠気(日本語版カロリンスカ眠気尺度〔KSS-J〕。1〜9で、9がいちばん眠い)を答えてもらいました。

分かったこと

以下の数値は、統計モデルで推定した平均です。

1. 冷やした夜は、深い眠りとデルタ波が増えた

冷やした場合(25℃)対照実験(35℃)
深い眠り(N3)の割合14.22%10.13%
デルタ波の量(μV²/分)2969.392496.58

どちらも統計的に意味のある差でした。夜のうち深い眠りが占める割合が、4ポイントほど高くなっています。

2. 眠りの途中の目覚めの割合が減った

眠っている間の段階のうち、目覚めが占める割合は、冷やした夜が 3.70%、対照の夜が 6.03% で、これも意味のある差でした。

ただし、眠り始めてから途中で起きていた時間の合計(中途覚醒時間)は、冷やした夜 17.54分、対照の夜 16.70分で、差はありませんでした。論文の考察には「中途覚醒時間を減らす効果がある」という書き方がありますが、表の数値からは、時間そのものではなく段階の割合で差が出た、と読むのが正確です。

3. 寝つきや眠っていた時間は変わらなかった

冷やした場合(25℃)対照実験(35℃)
寝つくまでの時間24.52分20.46分
眠っていた時間330.98分331.86分
睡眠効率(床にいた時間のうち眠っていた割合)89.81%88.57%

どれも統計的に意味のある差ではありませんでした。「頭を冷やすと早く眠れる」という結果は、この研究では出ていません。レム睡眠や浅い眠りの割合にも差はありませんでした。

4. 耳の奥の温度が、0.2℃ほど下がった

眠っている間の鼓膜温は、冷やした夜が 35.83℃、対照の夜が 36.06℃でした。著者らは、頭皮やおでこで冷やされた血液が頭の中へ流れ込み、脳の温度を下げる仕組みが働いた可能性を挙げています。

さらに、鼓膜温が低い夜ほど深い眠り(N3)の割合が高く、浅い眠り(N2)の割合が低いという関係も見られました。一方で、目覚めの割合と鼓膜温の間には関係がありませんでした。著者らは、目覚めが減ったのは脳の温度よりも、頭と枕が触れるところの温度や蒸れが下がったためではないか、と推測しています。

5. 寝心地はよくなった。起きたあとの眠気は……

起きたあとに答えてもらった評価は、次のとおりです。

冷やした場合(25℃)対照実験(35℃)
寝心地(NRS。0〜10、小さいほどよい)5.466.57
起きたあとの眠気(KSS-J。1〜9、大きいほど眠い)5.254.50

どちらも統計的に意味のある差でした。寝心地は、冷やした夜のほうがよく評価されています。

気になるのは、起きたあとの眠気です。論文の考察は「頭の冷却で日中の眠気が改善しうる」と読んでいますが、使った尺度(日本語版カロリンスカ眠気尺度)は数字が大きいほど眠いもので、表の数値では、冷やした夜のほうが起きたときに眠かったことになります。本文の読みと表の数値の向きが合わないため、この点は「眠気が改善した」とは受け取らないほうがよさそうです。

この研究の限界

著者ら自身が、次の点を限界として挙げています。

  • 人数が少なく、年齢が限られている:19〜22歳の14人だけです。生理前の不調(PMS)は30歳を過ぎた人で多くなるという報告があり、ほかの年代に当てはまるかは分かりません。
  • 応募した人たち:ポスターを見て自分から応募した人で、健康への関心が一般より高い可能性があります。
  • 温度を知らされたまま比べている:シートの温度は本人にも分かるため、寝心地や眠気の答えには思い込みが入りえます。
  • 自宅で、本人が機器を操作した:環境を管理した実験室ではありません。室温などをそろえるよう頼み、練習もしてもらっていますが、ばらつきは残ります。
  • 期間の間が1日しかない:同じ生理周期の中で4期間を試したため、前の夜の影響が残っている可能性があります。

これに加えて、読む側として次の点にも気をつけたいところです。

  • 比べたのは「25℃」と「35℃」:「何もしない夜」と比べたのではなく、体温に近い 35℃のシートと比べています。35℃のシートで頭が温められていた分、差が大きく見えている可能性があります。
  • 1チャンネルの脳波計:病院の睡眠ポリグラフ(脳波・眼の動き・筋電などを一度に記録する検査)よりも、測れる情報が限られます。
  • 黄体期の女性だけ:男性や、黄体期以外の時期、年齢を重ねた人で同じ結果になるかは、この研究からは分かりません。

日常で取り入れるなら

この研究から言えるのは、「頭を冷やせば早く眠れる」ということではありません。14人の結果からうかがえるのは、次のようなことです。

  • 頭を冷やすと、深い眠りやデルタ波が増える方向に働く可能性がある
  • 寝つきの速さや、眠っていた時間は変わらなかった
  • 寝心地の評価はよくなったが、起きたあとの眠気はむしろ強かった

研究で使ったのは、水の温度を 25℃に保ち続ける専用の機器です。この機器(COCOMIN)は2023年に生産を終えていて、家電メーカーが出していた、水を循環させて頭を冷やす枕も、いまは販売を終えたものばかり。研究の結果を読んだあとだと、少しさみしく感じます。冷やしすぎると、かえって目が覚めたり、首や肩がこわばったりすることもあります。試すなら、タオルで包むなどして冷たすぎないようにし、寝室の温度や寝具の蒸れもあわせて見直してみてください。

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頭まわりを整えたら、あとは眠りに入る時間です。眠りの和声では、雨音や小川のせせらぎなどの環境音と、やさしい和音を好きな量だけ混ぜて流せます。寝つくまでのひとときに、心地よい組み合わせを探してみてください。

この記事は、論文の内容をもとに一般的な情報としてまとめたもので、医療上の助言ではありません。生理前の眠気や不調が強い場合、眠れない状態が続く場合は、医療機関にご相談ください。

この研究の著者・研究室・企業

  • 研究室濱西研究室(関西福祉大学 看護学部。筆頭著者の濱西誠司教授が主宰。論文当時は岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科に在籍)

参考文献

  1. Seiji Hamanishi, Eri Eguchi, Tatsuo Ito, Kenjiro Nagaoka, Keiki Ogino. Head cooling during sleep improves sleep quality in the luteal phase in female university students: A randomized crossover-controlled pilot study. PLOS ONE 14(3): e0213706 (2019). doi:10.1371/journal.pone.0213706

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